つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和6年2月の読書感想文⑨ 世界はひとりの、一度きりの人生の集まりにすぎない。 林伸次:著 幻冬舎

渋谷のバール・ボッサ店主によるショート・ショート。

「まるでバーに入ったような小説」という一文で購入を決めました。

 

世界はひとりの、一度きりの人生の集まりにすぎない。 林伸次:著 幻冬舎

個人蔵

 

ショート・ショートをそんなに読む機会はないけれど、読んでみると改めて味わい深いことがわかります。

 

ショート・ショートとはいいつつも、そのお話は連綿とつながっています。

そのつながりはバーカウンターにいるお客さんが繰り広げる、その場で話される内容に思えています。何かと世間は「一個の作品」として前に出したがりますが、バーという空間ではそのようにくくるのは難しいのではと感じます。

 

また、バーは「宿り木」と言われます。休息の場所であり、英気を養う場所でもあります。つまりはそこで「息を吹き返す」場所なわけです。次々と訪れるお客さんの存在が「ショート・ショート」であるならば、バーはその存在意義を認められています。こういう時間があってもいいんだということを教え、認め、うなずいてくれる瞬間が、この本のページを開けば、そっと訪れてくれるのです。