渋谷のバール・ボッサ店主によるショート・ショート。
「まるでバーに入ったような小説」という一文で購入を決めました。
世界はひとりの、一度きりの人生の集まりにすぎない。 林伸次:著 幻冬舎
個人蔵
ショート・ショートをそんなに読む機会はないけれど、読んでみると改めて味わい深いことがわかります。
ショート・ショートとはいいつつも、そのお話は連綿とつながっています。
そのつながりはバーカウンターにいるお客さんが繰り広げる、その場で話される内容に思えています。何かと世間は「一個の作品」として前に出したがりますが、バーという空間ではそのようにくくるのは難しいのではと感じます。
また、バーは「宿り木」と言われます。休息の場所であり、英気を養う場所でもあります。つまりはそこで「息を吹き返す」場所なわけです。次々と訪れるお客さんの存在が「ショート・ショート」であるならば、バーはその存在意義を認められています。こういう時間があってもいいんだということを教え、認め、うなずいてくれる瞬間が、この本のページを開けば、そっと訪れてくれるのです。