令和6年3月の読書感想文④ 恋愛の発酵と腐敗について 錦見映理子:著 小学館文庫
ずいぶん哲学的なタイトルでしたが、ページを開けばそこにはただただ人間という真理がありました。
恋愛の発酵と腐敗について 錦見映理子:著 小学館文庫 個人蔵
恋愛モノでした。
生き方を変えようと努力と行動を起こす人は現実社会にも多くいます。
しかし不思議なことに、その過程の中で「どうして引き戻そうとするのか」という憎たらしいはたらきを目の当たりにすることがあります。
この作品はまさしくそんな作品で、呆れるというか、憎たらしいというか、憎めないというか、どこかで共感しつつも、虚しさや寂れが伝わるものがあります。
恋愛に疲れた、というのは、誰にでもある話です。そして、普通じゃない恋愛、というのも、今では多くの人が経験しています。一般的に社会では、不倫というものは通念上許されるものではないという見解になっていますが、世間ではちょっと違う評価をされがちです。そのずれに戸惑うこともありますが、身近な人においては厳しく、遠くのことについては寛容に、という具合なのでしょうか。どうでもよさといいますか、一貫性がないな、と思うことがあります。
ここでは女の人生が描かれていますが、翻弄されるような人たちが登場しています。
それを嘲笑ってはいけません。だって、明日は自分がその身になるのかもしれません。
小説は疑似体験に近いことができる媒体だと思っています。この本の中では、そういった体験が出来るのです。