これもまた底辺か、と思わせる、警察という呪いにかかった人たちの物語。
退職刑事 永瀬隼介:著 文春文庫 個人蔵
短篇集となり、全5篇を収録。
そこに登場する刑事(元もつく)は、どこか「寂しげ」で、「掠れて」見えます。
警察、特に刑事という職業は特殊だと思います。どの職業もそうではありますが、なかなか生き様が見えてこない。そしてこの職業を描く人たちは、どうしてもその職業に就く人たちを幸せそうに描いていない印象を受けてしまうのです。
この作品でも設定として取り上げられていますが、職業によっては「過去の記憶」がフィードバックとしてエッセンスを加え、登場人物の為人に灯りを照らします。それは長い長い記憶であり、フタをしてしまった記憶も含まれます。それを揺り動かされる事件が起きるという現実を含めていることから、なんと残酷な職業なのだろうと感じてしまいました。個人としては、そういった煩わしいことから抜け出し、なるべく身軽にいきたいと思うのですが、現実はそううまくはいかないようです。
読後はとても巧い小説だと感じる傍らで、虚しさもこみ上げてきました。