つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和2年4月の読書感想文② 孤舟(こしゅう) 渡辺淳一:著 集英社

はじめて、渡辺淳一さんの本を読みました。

 

わたしの年齢ですと、この方の代表作は「失楽園」なのですが、それを読まないで来ました。

この本が読みたい本リストにあった、ということは、何かしら理由があったのでしょう。

 

ということで、感想を述べていきたいと思います。

 

 

 

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孤舟(こしゅう) 渡辺淳一:著 集英社 八雲町立図書館蔵

 

 帯を見ると、「定年退職後の第2の人生」という文字があります。

 

タイトルとを結びつけていくのはどういったものかを読み進めていきますと、男性として何とも言えない気持ちになりました。

 

 

定年後、第2の人生を歩んでいる主人公は、昭和の時代であればどこにでもいるであろう、亭主関白な人です。つまりは奥さんに「お茶」「新聞」「水」「飯」「おーい、誰か来たぞ」と言っては人を動かし、自分では動こうとしない人です。その背景としては、自身が会社員時代に出世して相応の地位におり、家族を養ってきたという自尊心があります。

 

しかし奥さんがその状況を良しとしているかはまた別の話です。

旦那さんが働きに出ているときならまだしも、退職して四六時中一緒にいるとなると、事情は大きく変わってきます。その鬱憤のようなどろっとしたものがどこかに溜まっていき、これまでの流れが滞る様子が自然に表現されています。その光景が目に浮かぶよう、というか、まさしく目に浮かびました。なんとなくですが、自身の両親にも当てはまる部分があったことを思い起こされたからです。

 

奥さんはあることをきっかけに、家を出ます。その前触れはあったのですが、そこからの展開が何とも・・・というお話でした。

 

 

 

 

感想としては、男といういきものは・・・という、何とも恥ずかしい場面を見せられた感覚を覚えました。これはひょっとすると、自分にも当てはまることではないかと思うほどだったからです。それは家の中での態度もそうですし、異性に対する感情の流れもそうです。そこは学びというよりは、鏡で自分を見せられるような錯覚になったほどで、よくこんな本を読みたいと思ったよなぁとある意味褒めたいほどでした。

 

ときおりワイドショーでも取り上げられる問題ですが、こういった日常の中にある、ちょっと日常から逸れていったことを扱うのが上手な作家さんなのかもしれません。そのように考えてみると、ほかの作品を読んでみようかなと思わせてくれるのでした。