令和5年師走の読書感想文① ベルリンは晴れているか 深緑野分:著 筑摩書房
ミステリーではなく戦争関連小説なのではないかと疑ったのですが、戦争をうまくからめたミステリーになっていました。
ベルリンは晴れているか 深緑野分:著 筑摩書房 個人蔵
物語の舞台は1942年。第二次世界大戦だ。
アメリカ軍の食堂で働く少女がいるが、名前からしてアメリカ人ではない。
どうも複雑な事情があるようだ。
周りの兵隊は寛容なのか蔑みを込めているのか、その状況を当たり前に受け止めている。
その描写を読んで、いま紛争、または戦争と表現されているあの場所はどうなっているのだろうと考えずにはいられませんでした。
その少女に何らかの依頼というか、半ば強制的に「とある目的」を明らかにするために利用するアメリカ以外の組織がいて、ほぼプレッシャーという形で少女を動かしていく。その目的を掴んでどうするのかという問いにも答えないようなドライさをもった組織は、目的遂行の傍らで戦争の側面と次々と映し出していきます。
何がなんだかわからないまま読み進めていきましたが、最後に何とも言えない声を出すほどの展開が待っていました。
あくまで想像ですが、戦争という舞台は恋も産めばミステリーも産みます。極論を言えば、完全犯罪もできますし、英雄にもなれます。その一部分といいますか、これはとても大きな一部分だと思うのですが、大きな組織が着目すると、とても深くて複雑なケースも明るみに出てくるのかと感じました。
戦争でなくても、複雑なケースは山とあります。しかしながら、戦争が加味するものは重苦しく、そして深いです。飲み込まれるような作品でしたが、このような光景が現実世界に広がっていないことを祈りたいです。