【詩】いつか融けるから
人によって感じ方は様々だけれど
今年ももう雪の降る季節になってきた
服装は厚くなるし
静電気は起きるしで
この季節のいいところなんて見渡しても転がっていない
ただ目の前の世界が真っ白になり
それが光に照らされて反射される様子を見て
この世界は光を貯め込むのではなくて
他の何かを光り輝かせようとしているんだって思った
それは自分を犠牲にするといったようなことじゃなく
もっとライトな感覚なのではと思ってしまった
仕事に対する風当たりが強くなると
どうしても生活に直撃してしまう
昨日まで大海原だった職場が一晩で泥沼になることもあれば
真っ暗なトンネルを抜けて明るい下界へ飛び出すなんてこともある
状況の変化はまるで競馬のG1のようで
ただの紙切れとなった馬券を紙吹雪のように散らす人がいるいっぽうで
ひっそりと億万長者が誕生しているなんとこともある
この世界は非情なのかそれとも無情なのか
ネットで崇められているリーダーのことばを聞いてもピンとこない
いつしか世間はそんな舞台になっていた
今年は残念だけど自ら退場を選ぶ人が例年に比べて多いらしい
生きていることがかつて辛く苦しいと感じていたぼくにはその気持ちがわかる
いまここで生きていることが呪いのように感じ
生きていることが災厄ばら撒いているような錯覚を憶える
さしたる証拠もないのにその他大勢は指をさす方向を決めつけ
勝手に正義と悪とで境界を引いてゆく
そんな感覚で選別されるのはたまったものじゃない
どうにかして生きる途はあると思うけど
そう気づくまでには個人差がある
絶望の中にも1本の糸が実はある
何がきっかけでスイッチが入るかはそれぞれだけど
この世界が明日もある以上
どんなに辛く苦しくても
まだやれる
まだやれるんだ
精一杯とは言わない
ひっそりとでもいいから生きていこう
無名でいい 有名にならなくてもいい
生きていくことだけでも大変さ
それはいつの時代だって同じさ
寝ている間に降りしきった雪も
起きている間に積もっていった雪も
生きていれば必ず融ける時期は来る
ぼくはあなたの顔を知らないままなのかもしれないけれど
融けてくれることを願っている