つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和3年12月の読書感想文⑦ 新宿ナイチンゲール 小原周子(おばらしゅうこ):著 講談社

タイトル+帯コメ買いです。

 

f:id:maruyamabase:20211212210038j:plain

新宿ナイチンゲール 小原周子(おばらしゅうこ):著 講談社

第12回小説現代長編新人賞 奨励賞 受賞作

 

プロフィールを読みますと、現役のナースさんとのことでした。

 

 

 

主人公の設定がイマドキで目を引きます。

ネカフェ暮らしで、介護を主な業務とする派遣ナース。

1日8万円の介護料金は主人公に入る金額ではなく、利用料金になります。

介護に関してはまったく何も知らないため、興味深く読みました。

 

読み終えた感想としては、介護が必要な人も、その周りにいる人も、いろんな人がいるということでした。そして、事情も様々です。その描写がリアルに感じました。介護となりますと、言い方は失礼になりますが、その先はそう長くないという含みが入っているように思われるのですが、作中には若くして介護が必要になった人も描かれており、きれいな物語というよりも、闇の部分を見る物語でした。そういうことにおいては、味を感じます。

 

主人公もまた闇を抱えております。ネカフェ暮らしなんですから、あって当たり前のような設定です。そして彼氏がいる!というのには驚き。ほんとにあるのかもしれない設定ですが、この彼氏がなんとも頼りない(人のことは言えないが)。でも、主人公はどこかでこの彼氏を信じ、泣きを見ることになります。

 

 

個人的に残念に思えたのが、この作品の終わりかたになります。このような展開でどのような終わりを迎えるのだろうと期待していたのですが、ぴょーんと飛んでいくかのような終わりかたになっていました。これもある意味現代的なのかもしれません。それは最後の最後で見えた光明だったのかも。苦難にあえいだ主人公のもとに訪れた、希望の光だったかと思うと、納得のいく終わりかただったのかも。

 

今はこのような環境の家が多くなったかもと思うと、このコロナ渦は何を呼び起こしたのだろうと、つい考えてしまうのです。