つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和5年1月の読書感想文④ ビオレタ 寺地はるな:著 ポプラ文庫

読みたい本リストの中にあった一冊。

 

ビオレタ 寺地はるな:著 ポプラ文庫 個人蔵

 

寺地さんのデビュー作となるようです。

 

導入部分が衝撃的で、「婚約者から突然別れを告げらる」ところから物語ははじまります。そんな主人公の彼女を拾ってくれたのが、雑貨屋「ビオレタ」の店長さん。これがまた癖の強い店長さんで、そこでは棺桶なる、美しい箱を売っているというもの。そこで働き、そこで生まれた人間関係に触れ、主人公は「再生」と表現できる生活を送ってゆきます。

 

自分で立ち上がる、といった表現には、その人の性格の変化(よい方向への)が多く含まれているように感じます。物語はじめのころの主人公は、かわいそうでかつ、どこかが足りないといった印象を持たせます。そして最低最悪の状態で出会った環境が主人公を育て、変えていくという過程を経て、足りなかった部分の少しを補い、また一歩踏み出していくというエンドへ向かっていきます。

 

小説という物語の世界にはよく見られる設定ですが、それは実社会においても同様です。ドラマのような展開は、わたしたちの世界にも確実に存在します。だからこそ、いま最低最悪を味わっている人には読んでもらいたいと願わずにはいられません。どのような環境においても、その人を「引き上げる」出来事は必ず存在します。あとは自分自身がどう考え、どう動くかというゲージを貯めていくことにかかっているのです。