つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和4年8月の読書感想文⑮ 星のように離れて雨のように散った 島本理生:著 文藝春秋

「私」をめぐる旅の物語、ということばに惹かれて読みました。

 

 

星のように離れて雨のように散った 島本理生:著 文藝春秋 個人蔵

 

刊行は2021年7月となっており、作品背景にも新型コロナが反映されています。

 

 

主人公の大学院生は修士論文と論文の準備をしていましたが、そのうちの論文は宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を扱ったものでした。その背景には主人公が書いていた小説と宮沢賢治への想い、そして失踪してしまった父親に対する想いがありました。

 

そういった心境の中で、彼氏の存在や、紹介された仕事先での出来事が、主人公を揺らしつつも「旅」の方向性を決めていきます。

 

そして迎える結末(あくまで作品としての)は、記憶の扉を開けるものであり、そこには触れたくなかったものも含まれていたと思います。そういった過程の中で、何かに気づくことは大切で、背景を知っているのと知らないのとでは大きな差があります。最初から完成しているのではなく、未完であったからこそ、主人公である「春」は季節が動くように、その人生を自分でしっかりと動かしていける人になったのかなと感じました。

 

余談ですが、つい10年前ほどでしょうか、自分のルーツをある程度知りたくて、戸籍を取り寄せたことがありました。父母それぞれの祖父母は北海道への入植者です。母方は東北の人と聞いていましたが、父方は知りませんでした。調べるにはある程度の限界がありましたが、どこにいた人だったのかくらいまでは確認することが出来ました。

 

時間が出来たら、その地に足を向けてみようと思いました。