図書館で気になったので借りてきました。
スモールワールズ 一穂ミチ(いちほみち):著 講談社 八雲町立図書館蔵
全6編の連作集で、スモールワールズ、というのが少し気になっていました。
読み進めていくと、どうやら自分を中心とした、比較的狭い範囲の世界のことを指すようです。
その狭い世界には、どうやらぎしぎしといった擬音が聞こえるくらいの、生活に潤滑油が足りなくなってきたかのような摩擦が生まれています。
その摩擦を知っていても知らないふりをしたりと、体裁を繕うようなかたちで日常を過ごす様子が描かれていますが、これは結構なストレスです。摩擦どころか、火花が散ってもいいと思えるほどです。反面、その摩擦の原因を知り、丁寧に手入れを施す人もいます。人はどうやら大きく分かれるようです。
自分が大分年を重ねたからか、こういった話が沁みるようになってきた。
以前は劇的な話が好きだったが、緩やかな波紋を感じさせるストーリーに、お酒をひとくち口に含んだときの、心地よい余韻を感じてしまう。読書の趣向は変わっていないと思うのだけれど、それは新たに自分がいろんな経験を積み重ねてきたことの証明に他ならない。
わたしの小さな、狭い世界はどうだろうか。
愛おしいと思える、そんな世界でなかったら、今からでも遅くないか、と思いました。