つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和4年6月の読書感想文① 同志少女よ、敵を撃て 逢坂冬馬:著 早川書房

購入時は冬でしたが、その後賞をお取りになられたそうです。

おめでとうございます。

 

 

同志少女よ、敵を撃て 逢坂冬馬:著 早川書房 個人蔵

 

 

完全ジャケ買いです。そしてつい最近ですが、やっと読了しました。

 

帯にあるとおり、ドイツとソ連の戦争を描いた作品で、主人公は狙撃手になります。

その生い立ちから兵士に成長し戦場に出ていくまでがかなりリアルに描かれているなと感じるとともに、読み手に伝わってくるオーラがあります。ページをめくる手が止まりませんでしたし、少しずつ読んでも、その興奮は相当なものでした。

 

その反面、この作品を読むと現在の「ロシア-ウクライナ」間の戦争を想起します。

この本にも描かれているように、聖戦といった雰囲気は感じません。西洋の戦争に限らず、かつての歴史に刻まれた日本国内の戦争においても、それは同様だと思います。

戦闘行為そのものが無くなれば言うことはありませんが、武器があり、自分の立場や主張の正当性を証明する手段として、戦争(あえて)は行使されています。そして忘れてはなりませんが、戦争は何も武器を用いたものに限らず、外交や経済等、様々な分野に派生しています。我が国(もしくはその国のトップという個人)が世界の頂点にという考えは、現時点ではもう穏やかなものとはなくなっています。それを痛感させるには十分な内容であり、やりきれない内容でもありました。

 

 

本書は歴史資料なども参考にして描かれたということもあり、その描写はとてもわかりやすく、難しくて手が止まるということは一切ありませんでした。しかし、本作のような描写が現実になっている世界が実際にあるということは、強く知っておかなければならないと思います。著者の次回作にも期待したいと思います。