つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和4年6月の読書感想文⑨ ゴールデンタイムの消費期限 斜線堂有紀:著 祥伝社

ゴールデンタイムとはなんぞや?となったのですが、改めて本書を確認したところ、ざっくりと言えば「才能が発揮できる期間」のようです。

 

ゴールデンタイムの消費期限 斜線堂有紀(しゃせんどうゆき):著 祥伝社 個人蔵

 

主人公は「天才小説家」と呼ばれた高校生。しかし最後の小説を書いてからは数年間、次回作を書けずにいるという設定です。書けなくなった理由には根深い出来事があるようなのですが、そんな彼に「レミントン・プロジェクト」への招待が届きます・

 

このレミントン・プロジェクトですが、「AIを使用したカウンセリングを実施することにより、再び才能を開花させる」といったものと判明。主人公をはじめ、かつて若くしてその才能を発揮「していた」人たちはその目的に戸惑い、不審を抱きつつも、そのカウンセリングを受けていく・・・

 

カウンセリングというのは「人対人」というイメージが強かったのですが、その相手がAIとなるとなんだか「容赦ない」イメージを持ちます。そして「ぐうの音も出ない」カウンセリングになるものと予想します。それはカウンセリングを受ける者にとってよいことなのかどうかは分かれるところですが、そうやって「矯正」されていくことについて納得(理解ではなく)できるかが大きなカギになっていくでしょう。

 

カウンセリングの資格は今や数多にあり、自称を含めると色んなカウンセラーがいます。そのカウンセリングを受けてどのような結果が出て、その背景にはこのカウンセリングがあったからと確実に言える事例は、残念ながらまだ少ないのではと思います。だからこそ胡散臭くもあり、すがりたいものでもある気がします。

 

このカウンセリングに参加したかつての才能者たちの行く末は、一部想像を超えるものでした。とても良い作品だと感じました。