この作品たぶん映像化(ドラマか映画かはわからない)されています。
原作はとても面白かったです。
ざっくりいうと、企業対労働基準監督署のお話になります。
ことの発端はサービス残業中に招いたケガが労災ではないかということで労働基準監督署の耳に入ることになり、ケガをした社員が在籍する事業所に担当者が臨検のため赴きます。
このとき企業側では求めに応じて様々な書類を用意するのですが、
・労災に関する認識があいまい
・サービス残業の常態化
・危機管理体制の甘さ
などなどを労基署の担当者に指摘されます。
物語はこれらに対する不備を指摘され、改善報告を出してくださいで落ち着くはずだったのですが、仕事に対する感情と思いがけないアクシデントにより、臨検のメスはどんどん深いところにまで及ぶという話です。
いまでは残業に対する見方が少しは変わったと感じているのですが、企業によっては未だに色濃く残っている「風習」なのだと思います。次に労災ですが、手続きが面倒だからという認識もあると思いますが、迷惑をかけたくないという理由もあり、数多くの案件が「目を瞑る」ことになっていると感じます。それも業界や業種によりけりだと感じます。
恐らく、それらに従っていたら仕事にならないという感覚なのだと思いますが、現代としては考え方の順序が逆になっています。つまりは「従えないなら仕事をしてはならない」という考え方です。それくらい、従業員と仕事をある意味では「護る」というものだと思います。
本書は社会小説ではなく、ミステリー小説でした。
労基署担当者の推察も見事で、正直お世話になりたくないと感じるほどです。
知らず知らず、背筋を伸ばして読んだ一冊でした。