つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和4年7月の読書感想文⑩ 吠えろ!坂巻記者 仙川環:著 角川春樹事務所

新聞記者を題材としたお仕事小説。

エンタメ性満載で、面白く読みました。

 

吠えろ!坂巻記者 仙川環:著 角川春樹事務所 個人蔵

 

タイトルの「坂巻記者」は一応主人公なのですが、物語では上司(というか立場が上だけのような)という立ち位置のため、実際に動いているのはその下にいる記者ということになります。そのため、坂巻記者があっちへこっちへという描写はなく、読んでいて「主人公だれ?」となりました。

 

しかし新聞記者であるということから、ネタを見つけ、取材し、記事にまとめ、判断を仰いでから紙面に載るというプロセスを経るのですが、そこに主人公である?坂巻記者が登場し、ああだのこうだの(笑)言っては現場を混乱させます。その混乱が実はそんなに混乱でもないことが、後々わかってくるのですが。

 

この本を読んでいると、「自分のやりたい仕事(記事)が出来ない」というジレンマを抱える様子が描写されていますが、これは何もこの仕事に限ったことではありません。誰しもがそのような経験をしているんだな、というのがよくわかります。それをどう変換し、または乗り越えていくか。どう理解して腑に落とすか。できるかできないかで、今後が大きく変わっていきます。それが出来なければ適性の問題になります。どこまで突き詰めることが出来るかは、当人次第となってくるでしょう。

 

 

本書を読んでいて、とてもアツく、なりました。

坂巻記者は煙たがられる存在として設定されていますが、その背景を知ると、煙が不思議と気にならなくなります。それは私たちの実生活においても同じではないでしょうか。つい気持ちが寄り添ってしまいそうになる作品です。