第19回日本ホラー小説大賞 大賞受賞作になります。
先導者 小杉英了(こすぎえいりょう):著 角川書店 個人蔵
先導者とは何ぞや?と思いつつページをめくっていきました。
どうやら、特定の契約をしている人が亡くなった際、これまた特定の素質を持ち、かつ訓練を受けたものが、亡くなった人の魂(とここではいうことにする)を指定された場所(のようなところ)に導く人であることのようです。
こういった事態(仕事)が起きたことを「御役(おやく)」と読んでいるあたり、決して表には出ないものの、偉大な何かを維持させていくための大事な仕組みであることが想像できます。ただこれは読み進めていかないと明るみにならない部分なので、当初はてなマークが多数浮かんだ状態のまま、読み進めていました。
展開が読めずにいたのですが、どうやらその先導者、一人がそう長く続けられるものではないようです。そこからこの物語の本質がやっとのことで顕在化していきます。物語は新しい世界へ踏み出す展開をもって幕を閉じていますが、できればもう少し、その続きが読みたいなと思いました。
定められた運命、と言われれば、そこから逃れることはできない、または、それを全うするしかないという考えに支配されることが多いと思います。この物語はその流れに疑問を持ち、下界からの刺激を受けることで、指示や命令ではない、自分の意志というものが生まれてきます。その意思を「信じる」ことはとても大変なことなのですが、主人公はそれを選ぶのです。読み終えましたがあまりホラーには感じませんでした。
この独創的な世界は、この作品だけにしておくのは、もったいないですね。
他に作品があれば、読んでみたいと感じました。