令和5年繫忙期の読書感想文㉙ タラント 角田光代:著 中央公論新社
読売新聞朝刊にて連載されていた作品。刊行にあたり加筆等がされています。
身体にハンデを持つ人の話、というのは何となくわかっていたのですが、読んでみて中々に「重い(想い)」作品だということが伝わってきました。
タラントとは「使命」とされています。
いまでは多くの人が「使命」を意識し、考えていますが、その使命を積極的に掴みに行く人たちが、現代では特に増えている気がします。
主人公も社会的使命といったものを探るため、様々な道を模索します。
身内の実情や社会的な出来事を通して、様々なことを感じていきます。
突き進む、というのは、ある場面においては大切です。
しかし、突き進む中で抱く「自信」は、半信半疑ぐらいがちょうどいいです。
足を掬われる、という表現がありますが、突き進もうとするからこそ、こういった事態が待っています。それがその人にとって「必要」なものであれば必然のものとして捉えられますが、昨今ではそうもいきません。突き進めば進むほど、意味なく反発のようなものを買ってしまうのが、悲しい現代の現実です。
ちょうど、テレビの「ザ・ノンフィクション」を見ましたが、起業をする人の中でも「社会起業家」的なことを目指す人たちが増えています。以前は社会問題の解決には、企業で解決という考えはありませんでした。しかしながら現在では、一人の人間が真剣に問題を考え、解決する仕組みを構築しようとしています。これは純粋に、喜ばしいことです。
パラリンピックやボランティア、その他世界情勢に対する解決策や打開策は、もっと試行錯誤と議論が起こっていいと思います。本作では影を落とす展開も待っていますが、そういったことを乗り越えてこその「理解」があるのではないかと思いました。