つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和4年8月の読書感想文⑰ リアスの子 熊谷達也:著 光文社

読書感想文の課題図書として、読んでみて欲しいなと感じた作品です。

 

 

リアスの子 熊谷達也:著 光文社 個人蔵

 

仙台市在住の、直木賞作家による作品で、東北にあると思われる架空の町を舞台にした、人間としての大切な時間を綴った作品になります。

 

主人公は中学校教師で、とある日に転校生が入ってきます。

この転校生がちょっとした問題児であったことと、主人公の同僚として異動してきた女性教師が以前付き合っていた仲であったりなど、なかなか心が休まりません。

 

学校を舞台として描かれていますが、帯を読むと著者はかつて気仙沼の中学校で教壇に立っていた経験があるそうです。派手さはまったくありませんが、静かでありつつも時にざわざわと何かを感じさせる文章は、教育現場にいるかのような錯覚を憶えさせます。

 

教師と生徒の信頼関係は大人と子どもの信頼関係に一部似ているところがあると感じています。無条件に付き従わせればよいという考えもあるとは思いますが、それだけでは説明がつかない部分が、この時代には出てきます。ましてや子どもは個性のカタマリですから、そこを相手にしていくのは、本当に大変なことだと思います。昨今教職に対する憧れ云々は希薄になりつつありますが、なくてはならない職業であります。この作品のような、厳しくも優しい世界がどこかにあって欲しいなと願うばかりです。