つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和5年2月の読書感想文⑩ 小説銀の匙 百瀬しのぶ:著 荒川弘:原作 小学館文庫

劇場版(実写版)は結構前に見ていましたが、ノベライズはまだでしたので読んでみました。

 

小説銀の匙 百瀬しのぶ:著 荒川弘:原作 小学館文庫 個人蔵

 

 

季節の移り変わりとともに進んでいく人間と動物たちの物語。

コミックからの劇場版、そしてノベライズと流れているため、凝縮版(ダイジェスト版)のように読めていきます。コミックのような派手さはないように思えますが、これまで動物を飼育したことがない人にとって、第1次産業の世界は異世界に感じると思います。牛の大きさに圧倒されることをはじめ、何もかもが未知の体験です。そこから成長していく様を描いていくのは難しいのだろうなと思っていたのですが、そこそこうまく表現できていたようです。

 

 

この作品の公開後は少なからず、動物の飼育エリア等を含む敷地内に無断で入ってしまう人たちが増えたそうです。当人たちはどうも思っていないようですが、動物の飼育エリアは「防疫エリア」となっており、衛生管理上厳密にすみ分けられています。極論を言えば、この管理を無視してしまいますと、最悪の結果殺処分となります。一時的に取り上げられるデメリットは、まさしくここにあります。

 

反面、メリットもあると思います。つまりはこの業界に興味を抱いてもらえることです。近年は就業者も減っていますし、離農、という言葉もよく聞こえてきます。権利の主張も選挙の時にはよく聞こえてきますが、その声を上げていく人たちが減っているという事実があります。日本は自国で生み出せる資源が少ないですから、何かしらを生産し続けることができるというのは、これからの時代は強みになっていくはずです。単なる流行ではなく、様々な視点から、この世界の大切さが見直されていけばいいなと感じました。