つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和5年4月の読書感想文④ 一千兆円の身代金 八木圭一:著 宝島社文庫

第12回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作品となります。

 

一千兆円の身代金 八木圭一:著 宝島社文庫 個人蔵

 

身代金、というタイトル通り、政治家の関係者が誘拐され、犯人から身代金を要求されるという流れになっています。誘拐されたのは、元副総理の孫。背景には政治への不信が上げられます。身代金の根拠ですが、この本で記されている財政赤字の額、1.085兆円の支払いか、もしくは赤字体質を公式に謝罪し、再建案を具体的に示すこと、と指定します。

 

無論、警察も動きます。要人関係者の誘拐ということもあり、現場はかなり緊迫すると同時に、政治家と警察の関係もうっすらと見えてきます。この副総理という人物はかなり「クセ」のある大物だそうで、警察関係者でも手を焼く存在。そんな人の親族を誘拐したのですから、双方にとって面目丸つぶれとなった事態となっています。

 

話は誘拐したのは誰か、という線を手繰り寄せる、緊迫した話となっています。

同時に、様々な伏線(背景)が見え隠れし、人間への不信感が募る展開も待ち構えています。だからとはいえ、誘拐という手段が正しいものではないことを、誘拐犯も知っています。では何故、誘拐を実行したのかという真の「ねがい」も、汲み取ってもらえたらと思います。