令和5年4月の読書感想文③ ことり 小川洋子:著 朝日文庫
平成24年度 芸術千選奨文部科学大臣賞(文学部門)受賞作品になります。
かなり独特な物語。と思ったのですが、かなり少ない確率でいそうな人を描いています。
「人間の言葉は話せないが小鳥のさえずりを理解する兄」
「その兄の言葉を唯一わかる弟」
かなり狭いというか、限られた世界でしか息をすることのできないような設定に小さな苦しみを覚えるものの、本人たちはあまり苦に感じていないように見えます。
しかし周りの反応が段々と露わになってきますと、自衛力のようなものが芽生えます。兄亡き後の弟は小鳥とのさえずりを通して人間との交流を可能にしますが、世情が変わるにつれ、排除の境界を渡らされてしまいます。
小鳥のようなさえずりは、ささやかな苦しみや切なさも持ち合わせていた。
すごく不思議で、感動した物語はそうないなと思いました。