つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和5年4月の読書感想文⑬ かないくん 谷川俊太郎:作 松本大洋:絵 東京糸井重里事務所(ほぼにちの絵本)

大人になってから、よく絵本を買い求めるようになりました。

本書は欲しかった一冊でした。

 



 

谷川俊太郎:作 松本大洋:絵 東京糸井重里事務所(ほぼにちの絵本) 個人蔵

 

 

死ということについて、子どもの捉え方と大人の受け止め方が絶妙に描かれています。

絵本というよりは哲学、哲学というよりは心理学、はてまた・・・

 

 

かないくんは本書にはずっといなくて、誰かがかないくんのことに触れることで登場を果たすことが出来ています。そのかないくんがなくなった、という事実に達したとき、なんとなくかないくんは「置いていかれていく」感覚を覚えました。かないくんを悲しむ空気にはなるのですが、同時に違う何かが動き出しています。それは、かないくんを横に置いた、日常という時間の強調です。それは忘却なのかもしれませんが、忘却とはなんと怖く恐ろしいのだろうと感じました。

 

その中でひとり、かなりの時間がたった後にかないくんのことを思い出して絵本にしようとした老人がいました。この老人もほどなく亡くなってしまうのですが、老人がかないくんに抱いていた感情と、老人を見舞っていた女性の感情は、説明のつかないところでつながっていました。人が亡くなることで「何かがはじまる」という感覚を得ることは正しく、それをさらりと(むずかしかったと思うが)表現して見せた本書は、ずっと本棚に置いておきたい一冊となりました。

 

 

年齢を重ねれば重ねるほど、こういった難しい感情を紐解いてみたくなります。