個人的ブームの藤井太洋さん、今回はこちらを読んでみました。
サスペンスになっていますが、臨場感あり。
「原爆テロ」を想像すると、最悪の展開しかない。
本書はその「原爆テロ」を実行せんとする人と、それを阻止する人の物語です。
この物語において「3.11」が強烈な記憶として残っていて、その後の日本政府に不満を抱いたからなのか、東京オリンピック(作中では2020年開催)に向けての核によるテロが計画されていく。福島でだめなら東京で、といった感情と捉えました。
現実味しか感じない本作は、本当であれば「あってほしくない」作品だと感じます。
しかし本作が出てくるということは、核に対するあれこれを説明し切っていないと認識されているからだと思います。説明による理解は不十分のままで終わるのかもしれませんが、「もう一度核を」という正義の号令がこの物語に現実味を与えています。物語だからと高をくくっていたら、とならないように、核に対する姿勢をどのように取るのか、責任を持ってもらいたいと思いつつ、本書を閉じました。