つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和4年8月の読書感想文⑫ アンダーグラウンド・マーケット 藤井太洋(ふじいたいよう):著 朝日文庫

設定や展開など近未来を感じさせる内容でした。この著者の他の作品も読んでみたくなりました(多分過去に読んだことがある)。

 

アンダーグラウンド・マーケット 藤井太洋(ふじいたいよう):著 朝日文庫

個人蔵

 

タイトルにもあるように、「アンダーグラウンド」という世界が現在の世界にもあります。本書はその設定をより明確にし、地下経済圏でしか生きることのできない人たちの話を描いています。

 

通貨設定は少し複雑ですが、仮想通貨を用いての取引が主流になっています。

普段の通貨もあるのですが、税金が取られる・取られないの線引きから、仮想通貨による取引が格段に多いという設定になっています。税金を(多く)取られたくないと考えるのは今も昔もその先も同じようで、構想の巧さを感じさせます。反面、仮想通貨は現金とは違い「オンライン上の情報」が元となっているので、そこに制限をかけてしまえるという危うさを持っています。うまく言えませんが、地下経済圏で生きる人たちは、そこをうまく生きている印象を受けました。

 

主人公は地下経済圏で生きている「フリービー」と呼ばれる若者。その世界で仕事をし、「信用情報」を積み上げていくことで地下経済圏からの脱却を目指しています。話はとある仕事を受けたことがきっかけで、かなりの大事に巻き込まれるという、スピード感を感じさせる内容となっています。

 

本書はいわゆる「身分の低い者」が信用を得るためにひたすら頑張る物語である一方、経済が動く際に発生する「税金」に悩まされる姿をしっかりと映し出し、いかに対処していくかという近未来でありながらも現代に通じる話になっています。主人公の移動手段は自転車ですが、その所有すらも一種のステータスになっています。自転車で駆けていく姿と物語の展開には何か通じるものを感じましたし、続編があれば読みたいと思わせてくれる内容でした。

 

本書は仮想通貨の決済システムが根幹にあります。この構築というのは現代にもありますし、今後はそれがある程度簡単になり続けると思われます。その反面、何かをされても気づかないという失態は、他の仕事においても避けたいところです。