つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和5年6月の読書感想文⑩ アウターライズ 赤松利市:著 中央公論新社

東北独立という過激な四文字の帯に惹かれて買いました。

 

アウターライズ 赤松利市:著 中央公論新社 個人蔵

 

 

東日本大震災に匹敵する災禍に見舞われた東北地方だったが、その被害状況が驚くほどに「微小」であったことと同時に、東北県知事会が会見の場で独立を宣言したことから、ジャーナリストによる「仕組みの解明」が行われるという展開。

 

この着想を見る限り、東日本大震災という文言をモロに使ってはいないものの、その後の「東北」の対応をifというかたちで展開させたもので、とても興味がありました。特にアウターライズを受けた東北が発表した被害者人数の極端な少なさと、日本政府の承認(認可)を受けて独立したことによる、自立した運営をどう行うのかには疑問(関心)があったのですが、ここに記されている内容を見る限りは、「順調に運営されている」ように見受けられました。この仕組みが実際に活きてくるかは未知数ですが、昨今の国家による運営に批判的な人からしてみれば、理想の方法に見えなくもありません。政権を批判することはかんたんであり、周りと違うことを行動として起こすまでは最小単位で展開することが可能です。しかし問題はその後で、他者が関わってきた場合、そこに複数人の信条や考えが衝突する恐れが十分にあります。何かを批判して大いに理想を述べることは自由ですが、「実際にやってみて」の感覚が乏しければ、本作品のような東北の独自運営は絵に描いた餅になるでしょう。

 

日本のジャーナリストが丁寧にこの事態を追い、明らかにしていった内容を、今後の考えの礎の一部にしたいと思いました。