東日本大震災がおきた日にあった実話をもとにした物語です。
物語がはじまる前に、著者による説明がページにありました。
実話の内容として
・新日本フィルハーモニー交響楽団による演奏会
・会場はすみだトリフォニーホール
・指揮者はダニエル・ハーディング
・日時は2011年3月11日の午後7時30分
があり、本作その事実を基に構成されています。
特殊な状況下において開かれたコンサートですが、その会場に集まった(または避難してきた)人もまた特殊に感じられ、未曽有の災害を前にした戸惑いや不安等、入り混じる感情を読み取ることが出来ます。そのせいか、本書はさほど厚くない本なのですが、読むペースが最後まで上がりませんでした。あの日を想起させる、という意味では、感動の物語であっても、その頁を開くのをためらう人はいるのかもしれません。
この作品は記録であり、記憶でもあるような気がします。
あの日何が起きたか、というのは、時間がたてばたつほど、知りたいと思う人は出てきます。その中のひとつの物語が、本書なのです。