つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和5年6月の読書感想文⑫ あの日、マーラーが 藤谷治:著 朝日新聞出版

東日本大震災がおきた日にあった実話をもとにした物語です。

 

あの日、マーラーが 藤谷治:著 朝日新聞出版 個人蔵

 

物語がはじまる前に、著者による説明がページにありました。

 

実話の内容として

新日本フィルハーモニー交響楽団による演奏会

・会場はすみだトリフォニーホール

・指揮者はダニエル・ハーディング

・演目は交響曲第五番嬰ハ単調(グスタフ・マーラー作曲)

・日時は2011年3月11日の午後7時30分

があり、本作その事実を基に構成されています。

 

特殊な状況下において開かれたコンサートですが、その会場に集まった(または避難してきた)人もまた特殊に感じられ、未曽有の災害を前にした戸惑いや不安等、入り混じる感情を読み取ることが出来ます。そのせいか、本書はさほど厚くない本なのですが、読むペースが最後まで上がりませんでした。あの日を想起させる、という意味では、感動の物語であっても、その頁を開くのをためらう人はいるのかもしれません。

 

この作品は記録であり、記憶でもあるような気がします。

あの日何が起きたか、というのは、時間がたてばたつほど、知りたいと思う人は出てきます。その中のひとつの物語が、本書なのです。