これは魯肉飯(ロバプン)という語句に惹かれて買いました。
著者は台湾生まれ。のちに東京へ移住しています。
魯肉飯(ロバプン)のさえずり 温又柔(Wen Yuju):著 中央公論新社 個人蔵
台湾と日本との距離は、思った以上にあった。
読後にそんな感想を持ちました。
結婚した台湾人の妻は、理想であったはずの夫から徐々に「仕打ち」を受けているように感じます。
そのときに主人公が思うのが、遠い台湾にいる親族。東京という大都会で生きることの苦しさから、遠い故郷を想うようになります。
かつては故郷の親族を恥ずかしく思っていた主人公ですが、夫との不仲をきっかけに、家族のなりたちを求めに動きます。
台湾人の著者による小説のため海外小説感がありますが、展開は日本の小説でもよく向けられる題材。しかしこの題材は著者ご自身なのでは、と思うほど、舞台となる年代が近く感じます。
結婚は新しい親族を築き上げる行為であり、これまでともに過ごしてきた親族とは一定の距離を置くことになります。それを喜ばしく思うか、寂しく思うかは個人によりますが、国際結婚となったとしても、その土台は変わらないかもしれませんね。
本作においては主人公の母が徹底して娘に心をくだく姿勢が伺えます。
大きな海を隔てた場合の親子愛を、ここに見た気がしました。