令和5年6月の読書感想文⑱ ひと 小野寺史宜(おのでらふみのり):著 祥伝社文庫
書店でよく平積みされていたのを見かけました。読んでその理由がよくわかりました。
ひと 小野寺史宜(おのでらふみのり):著 祥伝社文庫 個人蔵
帯にはいろいろと1位をとった経歴が掲載されています。
主人公の青年は片親だったが、このほどその親が急死してしまい、大学を中退することに。その後の生きるあてを探してさまよい歩いた商店街の惣菜屋で見つけたコロッケに目が留まるも、他人に譲ったことで食べそびれてしまいます。
しかしそこから「糸口」が見つかります。絞り出すような生き様ではありますが、この青年の生きる姿勢に、読者の側も姿勢を正す勢いです。青年の生きる道は決して楽ではなく、自称親戚の心無いたかりにも遭います。しかし「生きる中心」があった青年は、周りの人に助けられながら、自分が進む道というのを改めて模索し始めます。その展開がなんとも現代的で、共感を生むのではないかと思いました。
そしせ青春小説らしく、お相手になりうるであろう、異性の登場もあります。
すべてを飛ばし読みして最後のページを読んでも「なんのこっちゃ」と思ってしまうのですが、その最後のセリフの意味は、そこにたどり着くまでのすべてのページが布石となっています。他の作品でもあることですが、最初から最後まで読んで感じてこそ、最後の1ページのセリフが大きな力を持ちます。久々に、読んで震えました。それくらい、感動した作品でした。
この作品がとてもよかったので、今度は他の作品も読んでみようと思います。