令和5年7月の読書感想文③ 私のことならほっといて 田中兆子:著 新潮文庫
短篇集になります。
ちょっとした異常さがあり、ぞくりとする感覚が残る作品です。
私のことならほっといて 田中兆子:著 新潮文庫 個人蔵
どことなく恐怖のようなものを携えた作品は、古典などを参考としていたと巻末に付記されていることからその影響なのかと考えてしまいます。
ここに描かれている物語は、日常の中に入り込んだ非日常、つまりは異常なことのお話になります(一部非現実的なお話を含んでいます)。ぞくりとしそうな内容ではあるのですが、日常が並走しているので、何となしに過ぎていく時間があります。その一方で、永遠に感じるような一瞬が存在します。そのどちらも、事実のような気がします。
田中さんの作品、過去に読んだことがありました。
市井の人を描いた話にはなると思いますが、そこを描く文章がまた素晴らしい。
若いころはどことなくエッジのきいた話を好んでいたような気がしますが、近年はこのような味がわかってきたようで、ようやく少しは本を読めるようになってきたかなと、自分を褒めてあげたい気持ちになるのです。