益田ミリさんはイラストレーターとして認識していましたが、本を出されているのは今回はじめて知りました。
永遠のおでかけ 益田ミリ:著 毎日文庫 個人蔵
エッセイになりますが、どことなく哀しさ、郷愁感を持った作品になっています。
その印象を決定づけたのは、エッセイの最初になる「叔父さん」。ここに著者の心のこりといいますか、供養のような、自分は忘れたくないといった意思が見えてきます。
永遠のおでかけというタイトルが、この最初の文章とつながり、「ああそういうことか」と得心がいったうえで、彼女の記憶と記録に触れていくことになります。
家族のことはもちろん、その周辺の出来事が著者の耳に入ってくるというのは、おそらく幸せなのではないかということをぼんやり考えました。たとえば同級生のことなど、大人になってからはほとんど便りが来なくなります。しかしながらほんの少しでも、その後を知ることが出来る便りが届いたとしたならば、なんとなくですが、その人は孤立していないように感じるのです。羨ましいと思う反面、ぼく自身はそれを捨てた身なので、そこに波は立たないだろうなと感じてはいるのですが。
この本は、家族としての、親族としての記録をまとめたものと思います。
その文章は決して重苦しくないどころか、読み手の背景をそっとさすってくれる、とてもやさしいものだと思いました。