令和5年繫忙期の読書感想文⑰ 去年(こぞ)の雪 江國香織:著 角川文庫
江國さんの小説は何かと読んできました。
こちらは当時平台にあった新作です。
去年(こぞ)の雪 江國香織:著 角川文庫 個人蔵
2020年刊行の同書を加筆修正のうえ、文庫となっています。
ちょっと複雑といいますか、たくさんの人生が出てくる内容で、読んでいて少々困惑しました。今でいうスピリチュアルといいますか、非現実的な内容になるのですが、これをまとめあげて文学作品に仕立て上げるのは凄いなと感じています。
双子の姉妹には、二人だけしか聞こえない声を聞くことができる。
これだけでもう方向性は決まってしまいます。
時間軸もあちこちに飛びます。ちょっとファンタジーです。
理解に時間がかかる設定は、読み手の思考に一時停止を求めるかのよう。
つまりはこの世界は、表面のことだけで判断してはいけないよと言っているかのような、実は深遠でありシンプルであってシンプルではないことを表現しているのではないか、と思うほどです。
最近はネットの世界で「闇は深い」との投稿を見かけますが、闇が深いのは当然のことで、それを知らなかっただけの話です。そして何事も「闇は深い」と表現していますが、それは少し浅はかさを露呈しているようにも見えます。
江國作品同様に、この世界のことも簡単に白黒の判断をつけることはできません。
それをいとも簡単に判断することは、幼さを露呈することと同義なのではと感じました。