つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和5年10月の読書感想文⑤ うちの父が運転をやめません 垣谷美雨:著 角川文庫

読んでみたら、社会環境の問題にまでつながるお話で腑に落ちました。

 

 

うちの父が運転をやめません 垣谷美雨:著 角川文庫 個人蔵

 

 

これまではこのタイトルを見てもピンとこなかったのですが、とある出来事をきっかけに読んでみることにしました。

 

そのきっかけは、義理の父の免許返納問題です。

 

 

話を戻して、本書は主人公の父親が高齢化し、運転も安心できないことから返納を進めるというものですが、読んでみるとそんな単純な話ではありませんでした。

 

返納の話をするために

・実家に帰省する

・親と話す

・上記に対するスケジュール調整

が発生します。

 

それですんなりいけばいいのですが、お約束のように父親は返納を拒否。

拒否する理由はやはり「車がないと不便になる」からでした。

免許を返納するというのは、そう簡単な話ではなかったのです。

 

 

本書は多くの人が直面するであろう問題を取り上げるとともに、そこに付随していく社会問題をも取り上げています。自分の親のことは永遠のテーマですが、今回のような免許返納という話題はきっかけのひとつでしかありません。仮に親が免許を持っていなくても、別な問題が直面することでしょう。その時にマメに実家に帰ることができるか。親と話すことが出来るか。簡単そうなふたつのことですら、重荷になっていきます。そういった描写を読者に投げかけながら、作品は解決へと向かって展開を始めます。

 

この作品は家族小説でありますが、俯瞰してみれば社会小説になります。

人は社会につながっている。そう強く感じた作品でした。