つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和5年10月の読書感想文⑲ 3年2組は牛を飼います 木村セツ子:作 相沢るつ子:絵 文研出版

小学校中級(おそらく3~4年生)からと書いてありますので、ある程度の自覚や責任を持ち始めたときに読んでもらいたい本のようです。

 

 

 

小学生らしいまっすぐな気持ちが、期間限定ではあるものの学校で牛(子牛)を飼うことになりました。この決定に賛同する児童や反感を抱く児童など様々な表情を見せるとともに、牛を飼うということはどういうことか、というのを丁寧に書き出しており、子どもに限らず大人も牛をはじめとした動物を飼うことに対して何らかの幻想を抱いていないか?という問いを投げかけています。

 

実際、牛の世話ですがここでは、牛小屋の掃除に餌やり、ブラッシング等が含まれていますが、子牛と言えど児童よりも体重があります。そして力強く動くため、大人でも時折お世話に時間がかかります。そして何より毛嫌いするのが掃除になり、ここでは牛の糞尿も一緒に処理します。その匂いに最初は慣れないでしょうし、牛の獣臭さもあります。そこが理想と大きく違うところです。そのかけ離れたものが他にも波及しているのではないかと、昨今の世界事情を見ていて思うようになりました。

 

牛の世話は何も「いきもの」に対する見方の変化だけをもたらすものではありません。

クラスメイトの距離感にも変化をもたらします。この機会を通して友達のことがよくわかってくると同時に、自分自身の気持ちにも向き合います。子どもにとっては激動の期間になりましたが、やがて牛とお別れするときを迎えます。

 

 

この本を読むと、子どもは子どもでしっかりと物事を考えて行動するのだなというのがよくわかります。これは教科書にはない、生の教材になるので、答えがひとつ、という感覚とは違ってきます。そういった環境の中で育つ子どもたちはどのような表情をしているのかなとふと、覗いてみたくなりました。