令和5年師走の読書感想文⑬ 代表取締役アイドル 小林泰三:著 文藝春秋
アイドルを舐めるな!という感じの作品でした。
主人公は「地下アイドル」。しかしながらひとつの事件がきっかけでその地下からも遠ざかっていきます。
そんな中、大企業から社外取締役の話が届きます。報酬も非現実的な額で、当初は引き受けてもいいのかと混乱しつつ、その企業の役員として勤務します。
その大企業ですが、かなり古風な企業方針があり、その指示もかなりおおざっぱ。
それでいて目標達成は必須事項ということで、社員は「その場しのぎ」の達成報告を乱発します。そして、この企業は粉飾決算等が発覚したとして経営陣の刷新を求められます。
社外取締役のアイドルは、「何かがおかしい」と思い始めますが、周りの役員はその声に耳を傾けようとしません。果たして自分が間違っているのか?という疑心暗鬼になりながら、この大きな闇に飲み込まれそうになっていきます。しかし、彼女のようなまっとうな考えをしていたのは、他にもいました。それが、彼女の存在をより強くしていくことになります。
アイドルのイメージはどこかちやほやされる一方で、大事な決定事項がある場では重用されないふしがあります。それはこの世界が「そんなに甘くはないんだぞ」というものであるからのような気がします。何も知らない・・・というのは常套文句ですが、それを投げかける相手に自分は含まれていないのかと、ふと胸に手を当てて考えなくてはならないことを示してくれた作品に思いました。
物語の最後ですが、このアイドルはとてつもない大きな行動を起こします。
このアイドルのその後を知りたいラストは、必読です。