つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。このたび不定期更新に切り替えました。

令和6年2月の読書感想文① 冤罪と人類 管賀江留郎(かんがえるろう):著 ハヤカワ・ノンフィクション文庫

誰かのお勧めで紹介されていた本でしたが、読んでたまげたというか、より現代のSNS等における構図が見えてきたように思えた本でした。

 

冤罪と人類 管賀江留郎(かんがえるろう):著 ハヤカワ・ノンフィクション文庫

個人蔵

 

著者は少年犯罪データベース主宰ということですが、こういった大きく難解で深く、闇がとても深いテーマを扱うことは相当の体力が必要だったと思います。

 

本書ですが、かなりの厚みと重みがあり、自立する文庫になっています。それくらいといいますか、よくまとめられ、考察された本だと思いますし、心理学やそこから更に深く入った専門学における教科書にしても遜色ないのではと思えるほどでした。

 

本書は冤罪をテーマにしています。冤罪は本当はあってはならないことですが、どうしても引き起こされる悲劇の事実です。しかしその冤罪が意図的に仕組まれたものだとしたら、そこまでに至る思考のプロセスは如何なるものであったのかという部分を、かなりレアな資料を土台として詳細に解説している本になります。ひょっとしたら、冤罪に関するワイドショー等でのコメンテーターの話より、こちらの本に書かれていることのほうがずっと信憑性があるくらいです。

 

SNSでいま起きていることも、冤罪の延長に感じる部分があります。何かをでっちあげることで自己の何かを満たし、世間に己が崇高な存在を知らしめようとするのですから。SNSで起きていることは、犯罪という名目では取り締まることが出来ないかもしれませんが、そのような「未満」の世界において、なすりつけるという自称は意外にも多くあるというのが率直な印象です。この本を読めば防げるというものではありませんが、人間の残酷さや冷酷さ、結果主義といったドライな部分がひんやりと伝わってくる作品に感じました。この本は、人間の聡明さと愚かさの両方が見えてくる本だと思います。