令和5年5月の読書感想文⑬ 雨のなまえ 窪美澄:著 光文社文庫
窪さんの作品は、自分の中では少々強烈な印象があります。
その強烈さを求め、今回も買い求めました。
裏表紙に、「降り注ぐ雨のように心を穿つ短篇集」とあります。
大事な局面と言いますか、ドラマであればテーマソングが流れてきそうなところに、雨が関わってきます。その雨は登場人物の心情に深く浸透し、影響を与えているかのような描写が秀逸でした。
本書は5編収録されており、内容はどれも現代的なものばかり。
だから猶更、リアリティを感じてしまうのかもしれません。
男の弱さ、女性の強さ。その逆もまた然りで、困難や同様、そして希望と祈りが混ざり合ったような表情が見えてくるようです。
人間は他人の不幸が好き、という傾向はあるようですが、そればかりだと飽きてしまう(バツが悪くなる)と思います。だからこそ「希望」を射しこむことで、登場人物も、不幸を欲する人間も、掬われるのではないかなと感じました。