令和6年3月の読書感想文⑪ オルガスマシン イアン・ワトスン:著 大島豊:訳 竹書房文庫
欧州や米国ではその内容の過激さから出版を断られたといういわくつきの小説です。
オルガスマシン イアン・ワトスン:著 大島豊:訳 竹書房文庫 個人蔵
この世界の主人公は「カスタムメイド・ガール」という、男たちの妄想と欲望を反映させたアンドロイドのような存在が主人公です。その妄想と欲望はこのガールたちの容姿を変えていき、商売のための道具と変えられていきます。しかしながらその中でも「自我」もしくは「思考」を持つガールがこの状況に疑問を持ちます。いくつかの局面や対峙を経て、何かを変えるために立ち上がる、という流れのお話になります。
物語のほとんどは、このカスタムメイド・ガールたちが弄ばれる様子を描いているため、核心にまで届くころには読み疲れているかもしれません。しかしながら失い続けていくものを得ていたのは作中のガールたちであり、それは現代の何かに通じます。そこから立ち上がっていく姿を何に重ね合わせたらよいのか、わたしたちは模索すると思います。それくらい、現代も非情な世界だと思っています。
決して映像化はされない作品だと思いますが、こういった考えの作品があるからこそ、均衡を保とうとする世間の動きがあるのではないかと、考えます。