ダークな、というほどではないのですが、底辺を底辺と感じさせないいっぽうで、無常さを感じさせる独特の味わいを持たせた作品でした。
無駄花 中真大(なかまさひろ):著 講談社 個人蔵
第14回小説現代長編新人賞 奨励賞受賞作品です。
しかしながら作品の中身は奨励どころか、転げ落ちるとはまた違った下り坂を降りていく様を描き、そのしがらみを仕方ないと受け容れているような、一方で計算し、そのとおりになることを望んでいるような、様々な顔を覗かせる作品です。
巻末に、この作品は永山則夫「無知の涙」に多くの着想を抱いたとのこと。
永山則夫は死刑囚で、収監されてから執筆をはじめたと聞いています。
その環境を逆手にとったような主人公の生きざまは、哀れというか、残念というか、とにかく「どうしてそうなるんだよ」としか言えないのです。もっと手前でどうにかなったであろうと思えるのに、その選択肢を取らなかったのは、大いなる怠けがあったのではと思います。それは人間誰しもが抱えている闇であり、罠です。その罠をも受け容れた主人公の人生を、どうか読んで欲しいと思います。