ブラックな仕事小説かと思いきや、という作品です。面白かった。
狭小邸宅 新庄耕(しんじょうこう):著 集英社文庫 個人蔵
主人公は不動産屋に勤める営業。
成績は芳しくなく、生活も荒れていきます。
プレッシャー等もあり、まさしくブラックな職場。
このまま潰れていくのを読みながら見ていくのかな。と思っていました。
しかし、転機が訪れます。いや、転機をつかみ取ります。
「辞めてしまえ」と何度も言われ、戦力外通告のような異動辞令も出て万事休すという状態であったのが、最後の最後で成績を残します。そして、これが最後ではなくなり、何かを掴んだように活動が活発化していく様を、ニュースを見てるような感じで進められていきます。不安を抱えながらも「いけるところまで」を体現していく主人公は、現代においてたくさんいる、もがき苦しんでいる人の代弁者なのかもしれません。
しかし、この主人公はヒーローではありません。
順風満帆というわけではないからです。
突き進んだから得たもの、そして手から離れていったものがあります。
その悲哀をしっかりと噛みしめて欲しいと思います。