そしていつしか、苦行のなかへ。決意を揺さぶる、荒行のなかへ。~ダンマの思い出④~
様々な感情を抱きながら身を投じた「瞑想合宿」。
1日の流れをおおよそながらも掴みつつ、ひたすら瞑想に励みます。
瞑想を始めた段階で、ぼくは不思議な声を聴きました。
それは決して、聞こうと思って聴いたわけではありません。
この合宿以外にも時折、じぶんの考えとはまったく別の考えやことばといったものが急にじぶんの中にもたらされることがあります。朝起きたらふしぎとそのことばだけが頭の中で反芻していたなど、現実的に証明が出来ないことを経験してきています。
じゃあ瞑想をすればそのような声が聞けるのでしょうか?
答えは「たぶんね」。
確実なことは言えません。その人の資質もあると思います。
だから 瞑想する=霊力・超能力を身につける ではないと言い切ることができます。
瞑想して開花する人はいると思いますが、上記がすべてではないと思っています。
また、ぼくが瞑想に求めたのは「そういう力が欲しい」訳ではありません。
よく勘違いする人が多いですが、当時のぼくは「軸」がありませんでしたし、ただひとこと「無力」でした。ひとは「あなたは無力なんかじゃない」と言ってくれましたが、それはモーションにしか見えなかったのです。だって、過去その言葉をかけてくれたひとは、離れていきましたから。現実的な選択を求めて。
と、上記のようなことを考える余裕すらない状態で、不思議な経験をしたぼくは「そんなこともあるんだなぁ」と、特に驚きもせず(何より驚けなかったです)、ひたすら瞑想に打ち込みました。どこかで背中を押されている、そんな感触をつかみながら。
しかし、早々にアクシデントが起きます。
恐らく2日目後半、もしくは3日目だったと記憶していますが、急に姿勢を保つことが難しくなりました。
急に痛みが走るようになったのです。
瞑想時は座布団のような、四角いクッションをふたつに折り、その上にお尻の部分だけを乗せて結跏趺坐、または半跏趺坐、もしくは胡坐のかたちで座ります。手の位置は自由で、座禅のように合わせたり、瞑想では代表的なそれぞれの手で印を作るような姿勢になったり、各々が取りたい形をつくります。
最初は「床が硬い」くらいにしか思っておらず、その硬さが気になったので、ブランケット等でクッションの厚みを増やし、負担を少なくしようとしていました。
それが良かったのか悪かったのかはわかりませんが、急に痛みが走るようになりました。
場所は脇腹に近い、背中の部分。
普段の行動時は何ら問題ないのですが、瞑想で座った時にだけ猛烈な痛みが走りました。
最初は、ただ我慢していました。寝れば治るだろうと踏んでいました。
しかし、この痛みは5日目くらいまで続きます。
そうなると、普通に座っての瞑想が難しくなります。
夜の時間帯に講話も入るのですが、単純に座って聴くことも困難になります。
体育座りも、正座も、あらゆる姿勢で座っても痛みが走り、前に突っ伏してしまう状態にまで調子が落ち込んでしまいました。
瞑想中や講話中は、極端な姿勢でない限りは座っている姿勢でとがめられることはないのですが、ぼくの前に突っ伏している姿勢はさすがにアシスタント指導者とサポートのかたの目に入り、指導を受けることになってしまいました。その時は「様子を見ましょう」的な感じで終わりましたが、ホール内での瞑想が痛みで続けられないのは大誤算です。じぶんのベッドの上でならばある程度ごまかしつつ瞑想が出来るのですが、1日のスケジュールの中では必ずホールで瞑想をしなければならない時間帯があり、その時間はぼくにとって「苦行」となりました。
この痛みはいつまで続くんだろう
この痛みは何でくるのだろう
朝飯前だって言ってたじゃないか(ちょっと信じてた)
ということばが頭の中でぐるぐる回り、瞑想に集中出来ない時間が多くなります。
しきりに姿勢を変えることが多くなり、瞑想の目的が変わってしまいそうでした。
何とかやり過ごす、という表現が妥当かもしれません。
それほど、単純な「座る」という行為すら、辛い動作となっていました。
そして。
じぶんのことで精いっぱいだった前半の数日中に、瞑想合宿に参加している人が少なくなっていることに気がつきました。
合宿中、じぶんのベッドやホール内の座る場所は割り当てられており、毎回同じ場所に座ることになります。その場所が、ぽつぽつと空き始めたのです。
これは合宿終了後に聞いた話ですが、毎回参加者総数の1割はギブアップしてしまうとのこと。合宿中の気候もあると思いますが、この単純な「瞑想」という行為にどっぷり浸かることが辛く苦しいものと感じてしまう人がいるそうです。それはこの場所に身を預けた期間は「合宿」なのではなく、れっきとした「修行」であり「苦行」であったことを通過することになりました。
誰に聞くわけでも、確認するわけでもありませんでしたが、確実に人は減りました。
その光景を見て、考えてはならないことを考え始めてしまいます。
それは
「この状態がいつまで続くだろうか。最終日まで耐えられる自信がない」
ギブアップを意識した瞬間でした。
きょうまでに読んだ本
奇跡に出逢える世界の聖地 稲田美織 小学館
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