つたわりとどけ。

日常と非日常のはざまから、伝え、届けたいことを個人で探求し、実践します。

令和2年8月の読書感想文② 再生巨流 楡周平:著 新潮社

楡さんの著書で、企業小説があったのは意外に感じました。

(それは普段違う作家さんの企業小説を読んでいるからなのかも)

 

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再生巨流 楡周平:著 新潮社 八雲町立図書館蔵

 

 企業小説としては王道パターンのように感じるのですが、主人公は社内でも相応の地位、いわば管理職にいるのですが、ある日異動を告げられます。

 

異動の目的は新規部署を立ち上げ、そこで新たな業績を上げて欲しい。

そう、主人公の上司は告げます。

しかし、その部署の人員はほんとうの「最低限」。

しかも、社内では評価が低い者ばかり。

この時点で主人公は、「左遷された」と認識します。

ここで腐るのか、それとも・・・というのが、王道のストーリーです。

 

今回の舞台は運送会社、宅配便会社となっています。

刊行は2005年となっていて、作品内ではもう少し昭和寄りの話かなとも思います。

作中で魅力的だと感じたのは、主人公以外にも「光る」登場人物がいるということ。評価が低い人間でも、「磨けば光る」ことの表現を巧みになさっています。

 

結果、人材は活き、かなりのビッグプロジェクトの設立を成功させます。

このプロジェクトを成功に導いた人材は、どこかで夢を挫かれそうになった人たちばかり。終盤はウルトラCが出てしまいますが、才能がある人でもない人でも、一定の努力を怠らなければ業務への理解度は誰よりも高まります。それが会社への貢献度に反映するのだと、作品を通して示されていたと思いました。